不思議なもので、人間って、自分への期待度で見た目も変わるってこと、ないですか?
短大進学から、就職。
特に強い意志があったわけでも、なにか特別な目的があったわけでもなかったのです。
ただ、なんとなく。
そんな状態だと、自分に対しても気持ちがあまり入っていなかったんですね。
その状態が、急変。
同期の男の子2人が、会社の方針についていけない、と半年で辞めてしまったのです。
一人の方の部署は、人数的に問題なかったのですが、困ったのはもう一人。
わたしと同じ部署のお隣の課。
当時わたしは建築関係の部署で、空調設備を扱う課にいたのですが、お隣りの建設機器の課が大ピンチ。
同期が辞めるとなった日から、やたら話しあいを設けていたのです。
扱うものが大きいため、注文件数がそれほど多くないのですが、顧客管理と定期訪問が大切。
中でも、最初に物件情報の上がる、設計事務所訪問は特に欠かせないお仕事。
同期の間内での移動も考えられているようでしたが、どこも抜けて困らない部署はなかったようで、せっかく育ち始めた新人を手放す部署なんてなかったようです。
わたしは、打ち合わせ室にコーヒーを運ぶ傍ら、きっちり黒板を確認し、お話しに耳を傾けて、ついでに灰皿の交換をするという時間稼ぎで、お話しの内容に興味津々だったのです。
そんなわたしでもつかめなかった情報。
ある日、突然、社長室に呼ばれたのです。
わたしは、スパイみたいに探っていたことがバレたのではないかと、ひやひやしながら社長室のドアをたたきました。
中に入ると、入社式で握手しただけの存在の社長が、後光がさしているほどに見えたくらいです。
ドキドキ、最高潮!!!
「突然だが、今回の○○君、退職について・・・。」
うわぁっっっ!
きたーーーーーーーっ☆
ついに、盗み聞きがバレたのか、と焦るわたしに、社長はお願いがあるという。
「営業に移動してくれないか?」